巻き爪ロボの開発にあたりその効果を科学的に検証するため、私たちは東京電機大学工学部・柳田明准教授にご協力いただき、3種類の実験および数値シミュレーションを行いました。

実験では、人体の爪をそのままの状態で使用できないため、切った爪を使用しています。

温浴効果で爪の柔らかさがなんと1/4に！

本実験は、「温浴による爪の硬さ変化と所要時間」を求める実験です。

爪は十分に吸湿すると、乾燥時の約1/3～1/4程度まで軟化が進みます。

また軟化が飽和するまでの所要時間は10分から20分との実験結果が得られています。

大学側の見解

切った爪を60℃で軟化する樹脂に埋め込み固定しています．マイクロビッカース硬さ計で300gf，15sの条件で測定しました．硬さ測定はバラつきが生じやすいですが，温浴時間の増加に伴い硬さが低下していることが確認できます．被験者は男性で20代：2名，40代：1名です．男女や年代による違いもあると思います．

表2：乾燥試験条件

図2 乾燥時間による硬さの変化(負荷0.5kgf,距離:20cm)

乾燥で爪が元の硬さに戻る時間は約10分！

この実験では「吸湿軟化した爪が元の硬さに戻るまでの乾燥時間」を求める実験です。ここでは約3分の乾燥時間で爪が元の硬さに戻るという結果が得られました。人体の爪は「爪根(皮膚の下にもぐりこんでいる部分)」から水分が補給されるため実験結果(約3分間)のおよそ3倍強、約10分の乾燥時間が必要になります。

大学側の見解

40℃で10分間温浴させた状態の爪をドライヤで乾燥させ，硬さの変化を調査しました．30秒刻みでドライヤをあてる時間を変化させました．硬さ測定に数十秒かかってしまうので，各時間の測定データは同一人物の異なる爪を用いています．乾燥時間の増加につれて，硬さが上昇しているのが分かります．今回はドライヤの位置がかなり近かったこと，対象の爪が小さい，切った爪は切る前と比べ乾燥しやすいなど様々な原因から3分程度で浸漬前の状態まで乾燥しましたが，実際の矯正時にはこれよりも長い時間が必要だと考えられます

上記の動画は「持ち上げ時に爪にどんな力が働くか」と「乾燥後に保持できる形はどこまでか」を求めるための性変形の数値シミュレーションです。この結果は爪のひずみ分布(変形度合い)を示しています。シミュレーションの結果から、お湯で軟化させた後に矯正した爪は、十分な乾燥を行えば、その大部分が矯正時の形状を保持できることが示されました。

大学側の見解

LS-DYNAにより巻き爪矯正時の爪の変形解析を行いました．爪は弾性体とし矯正器は剛体として解析を行いました．実製品と同様にネジを回すことでフックが持ち上がるような構造とし，境界条件として，爪の付け根から2/5までを固定しました．解析結果(動画)より矯正された状態で，ひずみ0.15以上の領域が広く見られます．ここには示していませんが，打抜き加工で製作した微小サイズの試験片(評点距離3mm，幅1mm)で引張試験を実施した結果，硬さと同様にヤング率も浸漬させることで4分の1程度まで低下しました．言い換えると，乾燥後にヤング率が上昇することで，軟化時に与えられた塑性ひずみの大部分は乾燥後も永久ひずみとして残るので形状を凍結することが出来ると考えられます．

数値シミュレーションは横浜国立大学大学院・尾崎研究室にご協力いただきました

まとめ

巻き爪矯正機の使用ガイドライン作成および矯正効果を検証するために，爪の力学的特性を調査しました．あくまでも，切って人体から分離された爪の物性値であり，実際の矯正の条件とは異なり，定性的な評価ではあるもののおおよそ浸漬温度と時間，乾燥時間の裏付けを実証できたのではないかと考えています．また，引張試験からヤング率が浸漬により低下していることが分かりました。このヤング率の変化により乾燥時の回復(スプリングバック)を抑制し，矯正時の形状を凍結できるといえます

巻き爪ロボの効果は、大学の研究にも裏打ちされた確かなもの。でもそれだけでは、単なるデータに過ぎません。

大切なのは、実際に使った人がどう感じたか。私たちはお客様から寄せられた生の声を随時掲載しています。